凡人エリックの blog

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仙台道渕諒平女性DV問題と新潟ファビオ酒気帯び運転問題におけるクラブの対応の遅れは勝利至上主義によるものか?

Jリーグで2つのトラブルが発生した。J1仙台の道渕諒平による交際女性への暴行とJ2新潟のファビオによる酒気帯び運転だ。

 

時系列の関係上、仙台道渕の問題から述べたい。

 

8月9日深夜に仙台の道渕諒平が当時交際していた女性に暴行。女性が被害届を出し、9月7日に道渕は逮捕された。
だが道渕はこの交際女性に対して過去何度もDVを繰り返していた。17年には甲府(当時J1)に入団したばかりだが、同年にも別の女性への暴行容疑で逮捕・拘留された。当時は処分保留のまま釈放され、不起訴処分。クラブから同シーズンの公式戦出場停止や減俸などの処分を受け、本人も反省の姿勢は見せていた。それから3年後、このような暴力がまた発覚し、逮捕されるとは呆れた話。

 

だが今回の問題は複雑さを伴う。

 

8月14日、相手女性の関係者から連絡を受けて、仙台はトラブルを認識。同日道渕に事情聴収し、その際に「当人同士での解決が望ましい」「選手にいつもと違う行動があると、双方のプライバシーに関わる」という理由で翌15日の清水戦には出場。17日から自宅待機を要請し、Jリーグに報告。

 

9月5日に示談が成立。7日には警察に任意同行されたが、同日午後には釈放。クラブは弁護士から微罪処分と聞かされ、8日から道渕を練習復帰させた。その後9月20日FC東京戦から7試合連続出場。逮捕後の問題の公表については、両者のプライバシーに配慮して控えていたという。

 

それでも10月20日発売の「FLASH」に記事が掲載されると、ついに仙台は道渕を同日で契約解除。クラブとしては、「(9月7日に)逮捕状を執行された」という報告は受けたが、「逮捕された事実は認知していない」と説明。同日以降のことについては公表してなかっただけに、この流れで契約解除というのは、記事に出なければそのまま風化、というか隠蔽させようという思惑があったと疑わざるを得ない。Jリーグでは前代未聞といえよう。

 

一方、被害女性の方は出演中の情報番組を降板させられ、彼女の所属事務所が面倒を避けるため、彼女の意に反して示談にしたとのこと。事務所の対応は冷たすぎる。
日本では加害者が不起訴になったり、被害者の方が立場が悪くなることが多い。この風潮は改めなければならない。

 

次はJ2新潟のファビオについて。

 

9月16日にファビオ、ペドロ・マンジー、スタッフが新潟市内の公園で飲酒。日付が変わった深夜にファビオが自家用車で帰宅途中、新潟県警の交通取り締まりを受けて酒気帯び運転が発覚。
17日に是永大輔社長、玉乃淳GM、アルベルト監督が事態を把握。18日にはペドロ・マンジーが取り締まりの直前まで同乗していたことをファビオが県警に伝えていた。

 

10月12日に第三者からの通報でJリーグが事案を知り、新潟に問合せ。14日に是永社長からJリーグに正式報告。15日に県警の任意捜査が終了し、ファビオとペドロ・マンジー書類送検される見込みとのこと。その後クラブ側から全選手への報告。さらにクラブのHPで公表し、報道に至った。19日にはファビオとペドロ・マンジーを契約解除。

 

新潟は酒気帯び運転発覚から約1か月も報告を怠り、Jリーグ規約の報告義務違反に抵触する可能性がある。

 

また任意捜査中でありながら、アルベルト監督はファビオを6試合(20節徳島戦は欠場、次の21節から6試合出場で3勝2分け1敗)に起用。是永社長は「警察に確認したところ任意捜査期間中の試合への出場と練習参加については、クラブの判断に任せると言われたことを監督に伝えた」とのことだが、これはあるまじき事。コンプライアンス上の問題としか言いようがない。また、玉乃淳GMは9月17日に事態を把握してから限られた人間以外には口外しないよう口止めしていたともいわれている。これも第三者からの報告がなければ隠蔽の可能性があったのではないか。

 

仙台も新潟も元々はプロビンチア(地方クラブ)の星と期待されていたチーム。なのに、選手のトラブルを可能な限り隠し、試合にも普通に出場させたのは道義的に問題。特に新潟はGMが口止めをしたとのこと。Jリーグは金持ちのビッグクラブは少ないが、それでも資金力に恵まれたチームとそうでないチームとの差が大きい。仙台、新潟はいずれも後者。仙台は今年のJ1リーグで2勝7分け13敗、勝ち点13の17位(10月21日時点)。しかも現在13試合未勝利中。新潟はJ2リーグで11勝10分け6敗、勝ち点43の5位と奮闘中。そう考えると目の前の1勝を求め、仙台なら道渕、新潟ならファビオという絶対的主力の力は不可欠。

 

だが勝つために道義に反することをしてもいいというなら、フェアプレーに反する。プロスポーツの世界、勝利至上主義は否定できないが、それでも今回の報告の遅れを見ると、勝利至上主義の弊害と思えてしまう。まして今年は降格のリスクがない。今一度プロスポーツクラブとしてのあり方や社会通念上の振舞い方など考え直す必要がある。Jリーグはコロナ危機発生時から迅速かつ大胆な対応を見せているだけに、各クラブも危機管理という点ではそれを原点にすべきだ。