凡人エリックの blog

いちこくみん「エリック」の思いを伝える場

サッカーのVARは長時間試合が止まり、試合展開をややこしくする。まずは1年間様子を見よう。

2020年のサッカーJリーグ(J1・J2)が開幕した。今年は夏に東京五輪が控えているだけに、23歳以下やOA枠出場が噂される選手は特にアピールしたいところであり、代表戦しか見てないサポーターも燃えるはずだ。そして今年はJ1リーグでVAR(ビデオ判定)が導入されることになっている。そのVARが早くも問題点を露呈した。

 

先に断っておくと、私はサッカーのVARには反対の立場だ。昨年の時点で今年のJ1での導入は決まっていたが、今でも内心難色を示している。

 

VARに反対の理由は2つある。
1つはサッカーという競技が持つスピーディでダイナミックな展開が思わぬところでブツ切りになり、本来の魅力が削がれたり、サポーターの中にはテンションが途切れる方もいると予想できるからだ。VARがなかった昨年まででも接触プレーで怪我人が出ても、笛を鳴らすのが遅く、攻めている側がプレーを止められてガッカリした表情を見せたり、そのチームのサポーターがブーイングをするのを見ればわかるはずだ。勿論怪我人の出たチームへの安全や配慮は必要だが。これがVARならば止まる時間が更に長くなることも考えられ、やはりテンションの低下につながるだろう。

 

もう一つは判定が覆りやすくなることだ。今までサッカーにおいて、基本的には審判の判定は覆らないことになっていた。名選手ほど「誤審もサッカー」という割り切りを見せていた。だから1986年W杯準々決勝アルゼンチンvsイングランド戦でのマラドーナの「神の手」が伝説として認められている。当時のマラドーナイングランドゴール前まで攻め込み、ゴール前でボールが浮かんだ際に、イングランドGKピーター・シルトンとの空中戦で先にボールに触れてゴール。だがこの時、マラドーナはヘディングではなく振り上げた左手でボールを叩いているように見えており、再生映像でも手で触ったことが確認。それでも主審はマラドーナのゴールを認めた。そしてマラドーナはインタビューで「ただ神の手が触れた」との名言を残した。

 

さすがにJリーグではそこまで露骨なハンドでのゴールが認められることはほとんどないが、それでもビデオ判定によって試合が混沌としたケースがある。

 

2019年ルヴァン杯決勝札幌vs川崎は両軍にとって同大会初優勝のチャンスとなった試合だ。激しい攻め合いで2-2のスコアで延長突入。その延長戦前半6分ごろに川崎DF谷口彰悟がファールからイエローカードを出されたが、その後ビデオ判定チェックで試合が止まり、数分後に谷口への判定はイエローカードからレッドカードに変更。最終的には数的不利の川崎が3-3のスコアから、PK戦を制して優勝したものの、後味の悪さは否めない。

 

今年の開幕戦では湘南vs浦和と横浜MvsG大阪でVARが発動された。

 

まず湘南vs浦和では、2-2で迎えた70分、浦和のペナルティエリア内での微妙なプレーにVARが発動。佐藤隆治主審は映像確認の「オンフィールドレビュー」を行うと、浦和DF鈴木大輔のハンドを取りPKの判定に。しかし、これを湘南FWタリクが決め切れず、湘南は逆転の絶好機を逸す。最終的には85分に浦和の関根貴大が決勝点を決めて2-3に。それでもあえて穿った見方をするなら、湘南の浮嶋敏監督は「自分の位置からはハンドかどうかわからなかった」というだけに、ハンドでのPK判定を得た湘南の方がリズムが狂った気もする。

 

そして今日NHKBSで見た横浜MvsG大阪でもVARが発動。1つ目は、前半34分の事。G大阪GK東口順昭のロングパスから倉田秋が抜け出し、左クロスを送ると、矢島慎也のシュートが決まるシーンが一度はオフサイド判定だったが、審判が止めてビデオ判定のチェックをしたところ、G大阪の追加点が認められた。このしばらく試合が止まるシーンは見てる側には煩わしさを感じる。勿論ビデオ判定で得することになったチーム(ここではG大阪)にとってはラッキーではあるが。

 

2つ目は終盤の横浜Mの猛攻に対して、G大阪DF藤春廣輝ペナルティエリア内で相手シュートが手に当たったように見えたが、ビデオ判定チェックしたところハンドにはならず。

 

こうしてみると、昨年の札幌vs川崎(ルヴァン杯決勝)と湘南vs浦和については、VARで割を食ったと思える側が結果的には勝つことができたが、逆に得をした側の方が無意識のうちにリズムを狂わせた印象。横浜MvsG大阪については、明らかに割を食った横浜Mがそのまま負けた。もし昨年までのようなVARがなかったならば、少なくともG大阪の2点目はオフサイドで消され、横浜Mは勝ち点1かあわよくば3を拾うことができたはず。

 

まだ今年のJ1は始まったばかりだが、少ない例を取り上げただけでもVARには煩わしさを感じるのではないのだろうか。勿論割を食ったチームが勝つケースもあるが、当面選手にとってはやりにくく、サポーターはやきもきする展開が多くなるだろう。決まった事だからしょうがないとは思うが、まずは今年1年様子を見て、状況次第では考え直す余地もあるということをJリーグ関係者には肝に銘じてもらいたい。